
各地域には、地元に根差した「地域密着型の小規模塾」が存在します。
- 『こんな小さな塾、なんでやっていけるんだろうか?』
- 『今どき駅前に行けば有名な塾がたくさんあるのに、こんな所にある塾に通う人いるの?』
- 『こんな塾に通うならオンライン塾に通えばいいのに、なんでだろう?』
このように感じるのは無理もありません。
僕もそのように思っていましたから。
しかし、実際、各地域にはとても尖ったニッチな需要があるのです。
今回この記事では、1つのニッチな需要の例を挙げ、自宅近くの地域に密着した小規模塾の需要について詳しく解説します。
塾に求めるものとは?

塾は、子供の『受験対策』のために通う事がほとんどです。
その場合、保護者が塾に求めることは、
- 子供の成績を伸ばしてくれるたしかな指導力と実績
- 豊富な受験情報
が一般的です。
『子供の成績を伸ばしてくれ、受験情報を豊富に持っている』ことは厳しい受験を勝ち残っていくためにもっとも大切な事であり、シンプルに塾の本分はそこにあります。
学校の場合は、勉強以外にも
- 人格形成
- 部活
- 友人関係
など、子ども達を大きくなっていくにあたり必要な様々な側面があります。
しかし、塾は『成績アップのため』に通うものです。
だから、優秀な講師陣が数多く在籍し、豊富な受験情報と実績を持つ大手の塾、大規模な塾は各ご家庭から選ばれるわけですね。
これは仕方のない事です。
しかし、地域密着型の塾が各地域に数多く存在し、ある一定の需要を満たしていることは間違いのない事実です。
それはなぜでしょうか?
家庭に代わり「学習管理する」という役割

なぜ、地域密着型の塾が各地域に数多く存在し、需要があるのか?
それは「父母に代わって学習管理をする」という役割を果たしている側面があるからです。
本当に地元に根差した塾の場合、
- 塾の募集を地元の公立学校に通っている生徒限定にしている
- この公立学校の学習の進め方や、テスト・行事のスケジュールに合わせて指導してくれる
- その学校にあった学習管理・対策をしてくれる
所が多いです。
深い部分まで理解しづらいと思うので、僕の体験談を例にして話を進めますね。
我が家の次男は、本人の意思で中学受験をせずに地元の公立中学校に進学しました。
長男を『管理型の私立中高一貫校』に通わした我が家としては、長男の学校と次男の学校のギャップがあることに驚きながら「なるほど」と思う部分がありました。
長男の通った『管理型の私立中高一貫校』は、その名の通り、学習については、そのほとんどの部分を学校側が管理してくれ
- 『〇月〇日までにこの課題を提出するように!』
- 『それまでに出さない場合は、評価下がるからね』
というようなことを、毎日、口酸っぱく先生方が指導してくれていました。
つまり、親はそれほど口を出さなくても強制的に学校と子供の間で完結してくれるようになっていたのです。
それに対して、次男の通っている地元の公立中学校は、良くも悪くも『各家庭に一任』されている状態でした。
もちろん、先生方は『〇月〇日までにこれをやるように』と最低限の管理してくれるのですが、管理型私立校のように口酸っぱく、毎日のように何度もは言いません。
「自調自考」できるお子さんであれば、何の問題もありませんが、ほとんどの子供たちは小学生に毛が生えたようなもんなので、「隙あらば、さぼる」ことを考えますし、自ら勉強を進めていくことは難しいです。
その場合、「口酸っぱさ」を担うのは各家庭の親ということになります。
この役割が非常に大変なのです。
一度言って「はいはい」と聞いてくれるわけではなく、ましてや先生ではなく実の親の言う事など年頃の子供たちが聞くわけもありません。
仕事と子供の管理に疲弊した親たちは
- 『誰か、この役割をやってくれる人はいないのか?』
と、どこかに助けを求めます。
そして、うちの地域の場合、この役割を果たすのが『地域密着型の小規模塾」です。
その塾は、
- 次男の通っている中学校の生徒限定で塾生をとっていて
- その中学校のシラバスの沿って指導を行い
- その中学校の中間、期末などの定期テストに合わせ各学年の対策をおこない
- 学習に関わる学校の提出物(ドリル、問題集など)の管理も毎週してくれ
- 進学指導も、それまでの卒業生の経験を生かし、その地域にマッチした指導をしてくれる
非常に尖った運営をしているのです。
なんといっても『学校まで限定して』開講していますからね。
尖り方も尋常じゃありませんよね。
ランチェスタ戦略中のランチェスタ戦略です。
こうやって提供している内容をリストアップしてみると、子供を『この中学校』に通わしている親なら確実に入塾させたくなる内容です。
この塾のスゴイところはターゲットの比重を、子供だけではなく、親に寄せているところです。
子供の学力を伸ばすことはもちろんですが、『家庭での学習管理をアウトソーシング』させることで親へ強烈な訴求をしています。
この場合、保護者が塾に求めるものの比重が「進学のための学力アップ」ではなく「学習管理のアウトソーシング」に傾いているということになります。
この部分で需要と供給のバランスが取れているということです。
これはあくまで我が家の近所を例に挙げましたが、ある程度、深い部分まで理解していただけたのではないかと思います。
学習塾と進学塾

塾には『学習塾』と『進学塾』があります。
後者の『進学塾』は、シンプルに『子供の学力を上げ、希望している学校へ進学を後押しするのための塾』ということになります。
対して、前者の『学習塾』は「子供の普段の学習を管理する」という側面が強くなります。
地域密着型の小規模塾の場合、後者の『学習塾』としても需要の方が大きいでしょう。
今回の例でも挙げたように
- 子供に対して、そこまで偏差値の高い学校に進学してほしいとは思っていないが、
- 普段の学校での勉強は、しっかりとしてもらいたい
- そして、その結果、それなりの学校に進学してくれればよい
- しかし、その管理を家庭で行うほどのリソースは割けないので外注したい
という考え方の保護者が多いのは、私見ですが肌感覚で感じます。
地域に密着した小規模塾の需要はそこにあるのではないかと個人的には考えています。
そのうえ、小規模塾は卒業生の受け皿となっていることもあります。
平たく言えば、
- その塾に通い、その中学校を卒業し大学に入学した先輩方をアルバイト講師として積極的に採用している
という受け皿の側面もあるということですね。
大学生たちとしても、勝手知ったる我が家のような場所でお小遣い稼ぎができるし、塾側からしても全くおなじ経験をし、塾生たちの気持ちが痛いほど分かる講師を採用できるわけですから、この上ない需要と共有のバランスと言えます。
小さなコミュニティの中で、好循環しているといえますね。
最後に
この記事では、自宅近くの地域に密着した小規模塾の需要について個人的な意見と経験を踏まえ解説しました。
「さおだけ屋はなぜ潰れないのか?」ではありませんが、長く継続している場合、何かしら明確なニーズが存在するということですね。
皆さんも塾選びに、また保護者の集まりの際のネタの参考してみてください。